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堕ちた魂のフーガ 9

九. 「岩さん、前のタクシーに、こちらに気づかれないように、後を追ってくれ。できるか?」「はい。」ひと言、そう返事を返した後、岩さんなる白手袋の運転手は、ひたすら無言で車を走らせていた。だがさすが、あきらに「厳選して来た」と言わしめるだけの事はある。ハンドルさばきは静かでソフトタッチながら、常に一定の距離を置き、時には相手が右折しても直進し、だがいつの間にかまた距離をとって後ろにつけている、間に常に...

墜ちた魂のフーガ 8

八.夜の闇に包まれた住宅街。人通りもまばらな路地に、こんな場所には似つかわしくない黒の高級車が、小一時間ほど前から停車している。この車が停車した時、すぐに一人の女性が中から出て来たが、その女性が去った後、別の女性が、車の中に入って行った。そのまま車は発車する様子も無く、そこに停車し続けている。中では、あきらと桜子が、密やかに話を続けていた。「牧野と俺が再会したのは、ちょうど去年の冬だった。牧野は永...

堕ちた魂のフーガ 6 過去編

六.「あと2、3年だと?!牧野、お前、ふざけてんのか!!」電話口で青筋を立てている司の様子が目に浮かんで、つくしは思わず、身を竦めた。うひゃ。これはかなり、怒ってるな。「ご…ごめんね、道明寺。私も、本当は寂しいの。遠距離だって、辛いよ。早くあんたに会って、普通の恋人みたいにお出かけしたり、てっ…手を繋いだり、一緒にゴハン食べたり、沢山一緒に過ごしたいよ。でもどうしても、勇気がないの。道明寺、あんたが、N...

堕ちた魂のフーガ 5 過去編

五. (過去編)ブーッ。 ブーッ。 ブーッ。携帯のバイブ音が鳴っている。つくしは表示された相手の名前を見て、慌てて講義を抜け出した。「もしもし…道明寺。久しぶりね!そっちはどう?相変わらず忙しいんでしょ?」「ああ。毎日みっちりと、仕事や一般常識の講義、パーティーや会食、会議、出張、何でも詰め込みやがって。俺は機械じゃねぇっつーんだよ。今電話してるのだって、たまたま今夜のパーティー会場が少し遠いから、...

堕ちた魂のフーガ 4

四.住宅地の路地にひっそりと停まっている黒の高級車。高級車に似つかわしく、運転席には白い手袋の運転手が座っているが、運転手は暇を持て余しているようだ。車は一向に発進する気配がなく、周囲の暗闇に溶け込むように停車していた。車の中の後部座席は、外からは窺い知る事が出来なかったが、中ではあきらが、最初はぽつぽつと、だが次第に自分の世界にのめり込むようにして、過去を語りだしていた。その顔は桜子に向けられて...

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