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今日の司クンアンテナ ⑩




トゥルルルル… トゥルルルル… トゥルルルル…

「司様?何かございましたか?」

深夜2時30分に、3コールで出たのは、さすが敏腕秘書と言うべきだろう。

「西田、もう眠っていたか?」

「いえ、明日の司様のスケジュールの確認と、経営戦略会議に使う資料の手直しを行ってから、眠るつもりでいました。」

司は、ふと思いついて聞いた。

「西田、おまえは、眠る時、何を着て寝る?」

「は?普通のスウェットと、髪が乱れると朝の時間が無駄になるので、ナイトキャップを被っております。しかし、司様。今の時間にそのような質問は、聞きようによっては、司様の性的趣向が疑われますので、私以外には絶対になさらないで下さい。それから、株式市場ですが、今のところ。NYの方でも、特に大きな変化は無いようです。もし何かあれば、夜中でもいいので私の方に
連絡を入れるように、部下には指示を出しております。
それで…何か?」

「……。」
司は内心、呆れていた。ナイトキャップだと?あの西田が?それに 人の性的趣向がどうのと、余計なお世話にもほどがある。
電話をかけた事を、後悔しはじめていた。衝動的に通話ボタンに触れたものの、どう話を切り出して良いかわからなかった。電話口でいいよどむなど、いつも即断即決、有言即実行の司からは、考えられなかった。
それは、敏腕秘書の西田も感じたようだった。
司が黙っていると、西田はさらに言った。

「こんな時間に急に電話をかけて来るなんて、よっぽどの急用ですか?もし私への愛の告白なら、残念ながら私はこれでもノーマルなので、お受けできかねます。」

アホか、俺もノーマルだ。
司は急に、夜中に秘書に電話をかけている自分がバカバカしくなってきた。しかし、よく考えてみると、西田は普段、あまり軽口をたたくタイプではない。と言う事は、司が話をしやすいよう、西田なりに気をつかっているのかも知れなかった。

「安心しろ、俺もノーマルだ。実は…プライベートで、おまえに頼みたい事がある。」

「やはり、プライベートな事なのですね。しかも、こんな時間に…。かなり重要な事なのではありませんか?私に出来るか出来ないかは別として、内容を聞いてもよろしいですか?」

「ああ。西田、おまえ…、牧野を覚えているか?」

「牧野というと、牧野つくし様の事でしょうか?」

「そうだ。」

「もちろん覚えております。忘れられるわけがございません。あの頃、まだお二人とも、英徳高校の学生で…。牧野様はとてもお元気で。それを見つめる司様の、優しげな笑顔は、どうやらあの時以来、封印されているようですね。」

「そうだな。西田…彼女は、まぼろしじよないよな?この世のどこか、同じ空の下に存在しているよな?
実は、最近よく、夢を見るんだ。それも昼間に、執務室や会議の途中、車での移動中、牧野が俺を見てる
…俺に何か言いたい事があるんじゃないかって、気になって仕方がない。ハハッ…西田、おかしいだろ?笑ってくれよ。あれから何年経つ?高校生のガキの頃からだぜ?
9年だよ。もう9年も経つのに、未だに一人の女を引きずってる…笑っちまうよな。」

司は、さも面白そうに、しばらく電話口で一人クククッと笑っていた。
西田は、黙って聞いているだけで、何も答えなかった。

司はしばらく笑っていたが、急に笑いを引っ込めると、言った。
「牧野に、返さなきゃならないモンがある。俺が持っていても、何もならねぇ。だから…だから、」

しばらく言葉を切った司だったが、やがて思い切ったように続けた。

「だから…、なあ、彼女を、牧野を、探してくれないか?どんな、状況でも構わない。彼女の消息が知りたい。頼む…俺の我儘を聞いてくれ。」

それは、司の魂の叫びのような言葉だった。
自分の気持ちを、見て見ぬフリをするのは、もう限界だった。

疲れていた。
乾いていた。
癒して欲しかった。

だから…、

牧野が欲しかった。


(続く
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