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今日のつくしちゃんウォッチ 2



「おはようございます。」

「おはようございまーす!」

朝の挨拶が飛び交っている。
都心の喧騒から少し離れた、住宅地。
都内ほどの便利さはないが、その分住宅地にしては緑が多く、近くに河川が流れているせいか、街を吹く風も気持ち良い。それでいて近くにはショッピング施設などもあり、生活には不自由しない。
つくしは、この街が気に入っていた。

住宅地の中、狭いながらも開けた土地に、市立桜ヶ丘第二小学校は建っていた。

「先生、やまと君が授業中、私のことエンピツでつっつきました!これで3回目です。次の席替えまだですかー?」

「え、ちがうんです先生、つついたんじゃなくて、たまたま当たっただけだよっ。ちょっと頭がかゆかったんですっ。のぞみちゃんこそ、おれのノート覗いてただろ。だからエンピツが当たるんだよ!」

「それは、やまと君が変な落書きしてるからでしょ。何この、
妖怪ムカデ星人、って。妖怪なのか宇宙人なのか虫なのかわかんないし。先生、ノートにこんなの書いてたら規則違反ですよねー?」

つくしは、教室に入った途端の、この騒ぎに苦笑していた。
桜ヶ丘第二小学校2年2組担任、牧野つくしーーーー。それが、いまのつくしの肩書きだった。

この学校に赴任してきて、2年目になる。
もともと、子どもが好きだったつくし。
英徳高校を何とか卒業すると、学費の安い国立大に進み、教職をとって、小学校教師になったのは、自然な成り行きだった。
つくしの小学生時代などは、小学校はただ登校して、授業を受けていれば良かった気がするのだが、時代は変わるものだ。今は少子化で子どもが少ないせいか、勉強だけでなく、クラスの中で誕生日会やクリスマス会、お楽しみ会など、細々したイベントが色々とあった。

生徒と先生の距離も近く、生徒はまるで友達のように、先生に話しかけてくる。
なめられると、言うことを聞いてくれないのではないか?ーーといった意見もあるにはあるが、つくしは、生徒が気軽に話しかけてくれるのが嬉しかった。

あたし、教師って以外と向いてるかも。

子ども達の話を聞きながら、つくしはそんな風に、自画自賛していた。
今のあたしには、仕事と、夢がある。だから毎日頑張れるんだ。

今のあたしの姿は、貧乏だった高校時代に思い描いていた、理想の自分かも知れない。

そう思うとつくしは、とても幸せな気分になった。
あの頃の自分に、見せてあげたいわ。

あの頃の自分……。

ふと、胸の奥にズキンと、痛みが走った。

あれ?

一瞬、フラッシュバックした映像。
高校の制服を着た自分が、目の前の男に、何かを差し出している。

ああ、あの時、あの場所でーー。



「……先生。牧野先生!」

「は、へっ?」

「へっ、じゃありません。そんな所に突っ立ってたら、皆の邪魔ですよ。」

「は、はい、すみません!」

いつの間にか、一時間目の授業が終わり、職員室に戻って来ていた。
すぐに、次の準備をして、教室にもどらなければならない。
つくしは慌てて、中に入った。

すると向かいから来ていた同僚が、言った。

「牧野先生、季節外れの花粉症ですか?目が赤いですよ。お大事にね。」

言われて初めて、つくしは気がついた。
頰を一筋、涙が伝っている事に。

「あ、あれ、おかしいな。そうそう、か、花粉症かも!」

つくしは慌てて、周りと自分にも言い訳すると、次の授業の準備に取りかかった。

「ちょっといいですか?」

その時、また誰かに呼び止められた。

「は、はい?」

つくしはまだ動揺していたので、返事がしどろもどろになってしまった。
見ると、教務主任の加藤だった。

加藤は言った。
「教頭先生が、お話があるそうだから、授業が終わったら、来てくれ、との事だよ。」

「お話?…はい、わかりました。授業が終わってから、伺います。」

教頭先生に呼び出された事など今までなかったので、とても気になるが、今は仕方ない。

手早く次の授業準備をすると、スッキリしない気分のまま、つくしは教室に向かっていた。


(続く





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