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今日の司クンアンテナ 16




「Allo?(もしもし)
Puis-je avoir votre nom,śil vous plaît?(どちら様ですか?)
…なんだ、司か。何か用?わざわざフランスまで電話かけて来るなんてさ。」

聞こえてきたのは、歌うような流暢な、男性にしてはやや高音質な声。それでいてどこか気だるげな、聞く側の感覚を麻痺させてしまうような、蠱惑的な声だった。

しかし、イライラと受話器を握る司は、もちろん蠱惑などされる筈もなく、無愛想かつ無遠慮に、類に対して言い放った。

「おい、類。オマエに頼みたい事がある。」

「はい?電話が遠くて、よく聞こえないんだけど。なに、頼みがあるって?司が?俺に?」

「ああ、牧野の事だ。」

「牧野って、牧野つくし?」

「そうだ。悪いか。」

「悪いかって…。プッ。司、まだ牧野にこだわってるんだ?少しは大人になったかと思ってたけど、高校時代から進歩ないんだね。」

クスクスと笑う声に、司は神経が逆撫でされるような気がしたが、ここは忍耐とグッとこらえ、スマートな自分を肝に銘じながら、言った。

「ハッ、偉そうに言ってるが、オマエこそどうなんだよ。オレが企画した同窓会、参加すんだろ?あきらに聞いたぜ。何でも、当日、牧野の家に迎えに行くと言ったそうだな?頼まれてもないのにそんな気を利かすなんて、まるで騎士(ナイト)気取りだな。」

「あはは、司、嫉妬してるんだ?わかりやす。司には、お礼を言わなくちゃと思ってたんだ。俺も今、こっちで生産してるブドウ園の生産を軌道に乗せるのに必死で、なかなか帰国出来ないんだ。だから同窓会での帰国を最後に、当分日本を離れるかも知れない。みんなで会えるのも、もしかしたら最後かも?牧野とは、高校時代にすごく濃い時間を過ごしてたからね。少しだけ2人で話したいんだ。それくらい、許してくれない?どうせ会が始まったら、司が独り占めしそうだしさ。もちろん牧野が俺についてフランスに来るって言うなら、俺はどんなに反対されても、牧野を連れてフランスへ渡るよ。それぐらいの気持ちは、俺も牧野に対して持ってる。ただ、俺には無理矢理どうこう、ってのは性に合わないからね。牧野の気持ち次第じゃないの?もしかすると俺が迎えに行った後、司には会わずに、そのままフランスへ、なんて事も、無いとは言えないかもね?」

笑いを含んだ類の、余裕に満ちた声を聞いて、司は頭にカッと血が上るのを感じた。
牧野を連れてフランスへ渡るだと?
絶対に、絶対にそんな事はさせない。
例え牧野本人が、それを望んだとしても、必ず自分の元へ連れ戻してみせる。
司には、牧野が自分の元に留まりたいと思うような魅力も、それを実現するだけの財力も、十分に持っているという自負があった。

しかし、ただ一人、類だけは。

類の王子様然とした外見、ビー玉のような色素の薄い茶色の瞳、優しげな雰囲気、柔らかな口調。
財力以外は、全て自分には無いものばかりで、司は自分の自信が、脆くも崩れ去るのを感じた。
しかも牧野にとって財力や権力など、全く意味がないどころか、邪魔なだけだろう。

…類には、負けられない。

類の声を聞きながら、司は固く決意していた。
なぜなら、牧野を失ってしまったら、自分はおそらく…。
9年も牧野を忘れられなかった自分が、この先も、忘れられるとは思えなかった。

妄執と、人は言うかも知れない。
もしかすると、広い世界の中、自分が心を許せる存在が、他にもいるのかも知れない。
しかし、そんな、砂漠で一粒のダイヤを探すような可能性よりも、牧野という確かな存在を手に入れる事の方が、はるかに司にとっては容易だし、牧野さえいれば、他に女など必要無かった。

「それで、司、結局俺に何の用なの?今から、ブドウ園に視察に出ないといけないんだけど。」

司の執務室には、そろそろ大きな窓から夕陽が差し込み、眼下に広がる大都会の街並みは、金色のベールで包まれていた。美しい黄昏時の、一瞬のファンタジー。この光景を見れば、もしかして世界は美しいのかも知れないと、人は誰もが誤解するだろう。眼下の闇が深いほど、金色の光の美しさは増すのだから。

「あ?…ああ。だから言ったはずだ。」

一瞬の物思いから引き戻され、司は目を瞬かせて言った。
しかし、類には伝わらなかったようだ。

「はい?俺、今司に、何か頼まれたかな?うーん、わかんないや。司が牧野に未だ、こだわってるのはわかったけどね。」

クスクス。
悪戯っぽく笑う類の声は、まだ午前中の早い時間であろう現地時間のせいか、どこまでも澄んで爽やかに聞こえ、司を戸惑わせた。
しかし戸惑いを表に出す程、司は純朴でも無かった。

「牧野は仕事が忙しくて、会には出席できないんだと。」

「へぇ…牧野、出席しないんだ?司、まだ会ってもないのに、フラれちゃったんだ。ぷぷぷ…普通、なかなか出来ないよそんなコト?」

「う、うるせぇ!だからこうして頼んでるじゃねぇか!類、オマエ、牧野の騎士なんだろ?それなら騎士らしく、ちゃんと牧野を迎えに行けよ!ただし、余計な寄り道をせず、真っ直ぐ会場に連れて来い。いいな、頼んだぞ。」

「もう…司、声がデカイよ。耳がキンキンしてきちゃった。ーわかったわかった、言われなくても、俺はちゃんと牧野を迎えに行くよ。そう言ったでしょ?でもひとつ言わせて…。司、自分で迎えに行けば?」

類の言葉に、司はグッと言葉に詰まった。

「バ、バカな、主催者のオレが迎えに行ってどうする?闇討ち、いや、そば打ち、いや、真打ち、そう真打ちは、最後に登場すんだよ。迎えになんて、行けるか。」

粋がって答えた司だったが、本当の理由は別にあった。

司は、怖かったのだ。
牧野に会えば、暴走しそうな自分が、怖かった。
皆で会うと言ったのは牧野の為だったが、実は自分のためかも知れなかった。

「じゃ、頼んだぞ。」

「ハイハイ。またね。」

挨拶を交わして、電話を切った。

類に任せておけば、心配ないだろう。
ライバルではあるが、その実力は認めざるを得ない。
複雑な心境の、司だった。


(続く


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☆☆☆

最近のこちらの司クン、電話ばかりしてる気がします。
仕方ないですよね、幹事さんですから!
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- 4 Comments

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2016/12/13 (Tue) 21:13 | EDIT | REPLY |   

チムチム  

※香 様

つかつくサイトだから司くん、大丈夫ですか(笑)
重いようで重くない、不思議つかつくです。どうにもペースが遅くて困ってます。
某××サイト様、私も大好きです。面白いですよね!
※香様のつかつくも、是非再開して下さい!!
派遣モノ、けっこう楽しみです^_^

2016/12/14 (Wed) 02:03 | EDIT | REPLY |   

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2016/12/14 (Wed) 13:52 | EDIT | REPLY |   

チムチム  

※ach※ 様

遅くなりましたが、コメントありがとうございましたm(_ _)m。
類くんに登場してもらったのは、ある意味挑戦です。
だって、あの類くんですよ?
彼こそは、理想の王子様じゃないかと思います。
多分、ドレスシャツに、白の燕尾服、さらには毛皮の真紅のマントなんて、似合うんじゃないでしょうか。
少なくとも私の中では、彼は王子様です。
ヒーローではなく、王子様です。
そんなイメージの類くんを、おこがましくも、目指しています。

2016/12/19 (Mon) 23:54 | EDIT | REPLY |   

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