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今日のつくしちゃんウォッチ 11




「この間のお話ですが…。覚えてくれていますか?」

いかにも話のついで、という感じで切り出された言葉のさりげなさとは裏腹に、加藤の目はとても真剣だった。

「あ、あのっ。この間のお話とは、車で、あると君の自宅を訪問した時の、帰りのお話でしょうか?」

つくしは、加藤の真剣な目を受け止められず、俯いてしまった。

「そうです。でも、そう、あれから随分時間がたつし、牧野さんの事だから、きっと忘れてますよね?職員室でもしょっちゅう、『あっ、あれ忘れてた!』とか、『しまった、これやっとかないといけなかった!』とか、ブツブツ呟いてますよね。」

「よ、よく見てますね。」

「いや、決してジロジロ見たりはしてないですよ。でも、どうしても気がつくと、牧野さんを目で追ってしまうんです。すみません。どうやらいつの間にか僕は、牧野さん、あなたを、とても好きになってしまったみたいなんです。本当にいい歳して、同僚に心を奪われるなんて、自分が恥ずかしいです。でも、一人で考えているだけでは、もうどうしようもないので、思い切ってお誘いする事にしました。
…今日、牧野さんが来てくれて、正直、かなり舞い上がってます。僕の顔、赤いですよね?シラフだなんて、信じられないでしょう。こんな姿を学校の生徒達に見られたら、僕は恥ずかしくて死ねます。だけど、それだけ真剣です。
牧野さん…、良かったら、僕と、正式にお付き合いして貰えませんか?後悔させないように、精一杯、頑張ります。」

そこまで一気に言うと、喉が渇いたのだろう。加藤はグラスに注がれたペリエを一気に飲み干し、炭酸にむせてゴホゴホと咳込んでいた。

つくしは、加藤のセリフを聞いて、内心焦っていた。
永徳に通っていた頃の、F4と呼ばれた彼らほどではなかったが、加藤もまずまずのイケメンである。
というより、F4の彼らが、かなりケタ外れだっただけで、世間の一般基準から言えば、加藤は十分、好男子と言えた。

そんな、爽やかな好男子である加藤から、このような告白をされて、嬉しくない女性がいるだろうか。

加藤は、ようやく咳が鎮まると、涙目になった顔を、ナプキンで拭いていた。
その姿は少しコケティッシュで、思わずクスッと笑ってしまい、加藤からの真剣な告白に焦るつくしの心を、少し軽くしてくれた。

だから。
つくしは、思い切って正直な気持ちを、答える事ができた。

「わ…私のような、仕事が真面目なだけが取り柄みたいな人間に、そこまで言って下さって、ありがとうございます。今まで男の人に、そんな風に言ってもらった事が、その、無かったので、お気持ちはとても、有り難いです。そっ、その…失礼な言い方ですが、一応、私も女の端くれなので、個人的に見ても、加藤先…さんは、とても魅力的だと思います!
だからこそ…そんな、とても魅力的な方が、私みたいな地味な女を、好きだと言って下さるのが、何故なのか、とても不思議なんです。」

「牧野さん。人を好きになるのに、あなたは一々頭で、あの人はどうだとか、理由をつけますか?初めは、ただ何となく気になるだけだったんです。もしかしてその段階で僕が、もっと早く自覚すれば、引き返す事が出来たかも知れません。でも、遅かった。気付いた時には既に、牧野さんは僕の心の中に、定位置を作って存在感を主張していました。」

瞬間、つくしの心に浮かんだのは、加藤の顔ではなく、遠い幻のような面影だった。

きらめく黒曜石のような深い色の瞳。癖の強い特徴的な髪。哀願するように、愛を乞うように、優しく押し付けられた唇。いつもストレートで、不器用ながらも熱い感情をぶつけて来た、アイツ。

その面影は、つくしの中で勝手に膨らみ、まるでアニメのコマ割りのように、様々な場面が、流れては消えて行った。
目を閉じたつくしの瞼から、涙がスーッと音もなく、流れて、落ちた。

目を開けた時、つくしの瞳には、強い決意が、宿っていた。

「加藤さん。あなたの仰る通りです。いつの間にか、定位置を作って存在感を主張している。フフ…何故なんでしょうね。でもよくわかります。私の心の中にも、勝手に住み着いているヤツがいますから。」

加藤は、若干驚いたようだった。

「そうですか。でも何となく…そう、何となくなんですが、感じていました。ご自分では気付いていらっしゃらないかも知れませんが、牧野さん、時々遠くを見つめてため息をついたり。付き合っている相手がいる風でもないのに、他の独身女性のように、全く彼氏などを、欲しがる様子も無かったり。もしあなたが、彼氏を欲しがる様子があったなら、真っ先に僕が立候補してましたよ。でもそんなチャンスは無かった。残念です。でも、失礼ですが牧野さん…、まだ、一人ですよね?」

ドキッ。

「うっ。た、確かにそうです。アイツとはもう何年も前に会ったきりで、今は、付き合っている訳ではありません。
だっ、だけどっ!アイツの事、多分私、好きです。それに…。」

一瞬言葉に詰まったつくしを見て、加藤はニコリと相好を崩し、言葉を重ねた。

「なるほど。あなたの心に住み着いている人は、相当しぶといのでしょうね。わかりました。でも僕は牧野さんに、その彼を無理に忘れろと言っている訳では、ありませんよ。今は、その彼とのシェアでも、構わないんです。ほんの少し、あなたの心に僕の場所を、空けて貰えませんか?こう見えても僕、堅実な方なので、我儘は言いませんから。」

「加藤さん…。今の私に、そんな風に言ってもらう資格はありません。それから、もう一つお伝えする事があります。
私…、この春で、一旦、小学校教師を辞めようと思っています。」

「えっ!」

これには、加藤も心底、驚いたようだった。

「春に一旦、退職して、海外に語学留学しようと思っています。校長先生には、既に内々に話をしています。
だから…。今の段階で、誰かとお付き合いする事は、相手にも迷惑がかかるし、考えていません。加藤さんの、お気持ちは嬉しいんですが、そういう訳なので、す、すみません。」

海外に語学留学する。
今まで、つくしの中で、ずっと温めていた計画だった。
20代も後半の今、挑戦するなら最後のチャンスだと、つくしは考えていた。

加藤はさすがに驚き、しばらく無言だったが、やがて言った。

「そうですか。それは、知りませんでした。しかし、いずれまた日本には、戻るんですよね?それなら、まだ僕は諦めません。少しショックではありますが、まだ今すぐ海外という訳でもないですし、また近いうち、お誘いします。」

今は、これ以上の話は無理だと思ったつくしは、否定も肯定もしなかった。
一応、言うべき事は、言った。
いずれ、道明寺とも、話をしなければならないだろう。

しかし、道明寺に関しては、はっきりと拒絶できる自信が、つくしには無かった。
会ってしまえば、自分の決心など、蝋燭を吹き消すように、アッサリと消されてしまうのではないか。
それが怖かった。

加藤と別れ、自宅に向かう間も、夜空の星を見上げながら、つくしの想いは彷徨っていた。


(続く


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☆☆☆

新年、おめでとうございます(*^_^*)

次回、いよいよ同窓会当日です。毎度時間がかかり、すみません。
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- 2 Comments

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2017/01/02 (Mon) 19:19 | EDIT | REPLY |   

チムチム  

※香 様

語学留学の名目で、司と密会 ←その手がありましたか!(笑)
おろ、系統?もうこの際なんでもアリかも?(^^;;
コメント嬉しいです。ありがとうございます。

2017/01/03 (Tue) 03:20 | EDIT | REPLY |   

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