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司とつくしの小夜曲 ーアンテナ&ウォッチ完結編 前編ー

(前編)


ごくありふれた建物に入る、ごくありふれたカフェ。
そこでささやかな休息をとる、ごくありふれた人々。
夜も遅い時間になり、カフェ自体も休息しているかのような、静かな店内。

ツカツカツカ。

少し前に出て行った、淡い色合いのサラサラヘアが特徴的な、長身のモデルばりの男性に代わり、店内を堂々と闊歩してきた、これも長身の男性。

ありふれたカフェの店内の空気が、一瞬にしてピンと張り詰めた。
いや、その前、最初の男性が席を立った時から、そこにたまたま居合わせた数少ない客達は、まるで高い入場料を払って見にきた舞台のように、彼等の振る舞いから目が離せないでいた。

しかしそんなギャラリーなど、全く意に介していない司は、まっすぐにつくしの座る座席に歩いて来ると、その横にドカッと腰を下ろした。

つくしは、類が戻って来たと思い、軽い気持ちで振り返ったが、こちらに歩いて来る人物が見えた途端、驚きのあまり、言葉を失ってしまった。
何か言わなければと思い、口を開いたが、言葉が出なかった。

その間に、司はしっかりとつくしの隣に陣取ると、左腕を伸ばしてつくしの座る座席の背もたれにかけ、つくしを斜め上から見下ろして、言った。

「遅かったのは、オマエだろ。いつまで待たせる気だ?」

つくしを見下ろす司の目は、黒く妖しく瞬いている。

「……!!!」

つくしは口をパクパクさせたが、まだ言葉が出ない。
司は、そんなつくしの表情を見ると、今までの仏頂面を緩め、フッと笑った。

「何だよその、鳩がポップコーン食らったような顔。いや水鉄砲だったか?」

「それは豆鉄砲ですね。」

類に次いで現れた司の男っぷりに、完全に呑まれて呆けていた加藤だったが、急に職業意識を思い出し、礼儀正しく答えた。
司はそんな加藤を一瞥すると「フン」と鼻を鳴らし、他の獣を威嚇する雄獅子のような剣呑な表情で相手を睨みつけた。

「何?テメエどこの誰だか知らねぇが、牧野はオレの女だ。わかったか?わかったなら今すぐ帰れ。オレは牧野と話がある。」

あまりの自分勝手な物言いに、それまで言葉が出なかったつくしが、口を挟んだ。

「ち、ちょっと道明寺!…さん?久しぶり…です。お元気そうで何より。ひとつお言葉だけど、私は私、牧野つくし。誰々の女じゃありませんから。それから紹介します。あの、こちら、加藤先生。私が今働いている小学校で、とてもお世話になってるいる先生なの。それから加藤先生、こちら、道明寺…さん。高校の時の同級生で、それと…。」

「それと元彼だろ。…牧野、その不自然な敬語はやめろ。おまえに敬語使われると、首がかゆくなる。」

頭をやや傾けて、首をポリポリ搔く仕草をする司を見ながら、加藤がしみじみと言う。

「そうですか、牧野さん。この、道明寺さんという方が、あなたの心にずっと住み着いている彼なのですね。なるほど彼なら、牧野さんがずっと忘れられないの、わかる気がします。」

つくしは、司に自分は元彼だとハッキリ言われ、少し恥ずかしそうに俯いている。

「そうだろ、わかるだろ?オレみたいに全て揃ったいい男は、なかなかいないからな。もうひとつ言っとくが、元彼から今彼にヨリを戻すのも時間の問題だ。さっ、牧野、こんな所で時間を潰してるヒマはない。オレは忙しいからな。では、加藤先生とやら、ここの請求は払い込み済みも含めて、すべてウチに回すよう言っておきます。コーヒー代は気にしなくていいから、ゆっくり飲んで行って下さい。」

つくしの腕を引いてサッサと席を立とうとする司を、つくしは慌てて引き止めた。

「ち、ちょっと待って!どこに行くつもり?あたしは、道明寺と行くなんて一言も…!それに、花沢類は?彼に何も言わずに店を出るなんて、出来ないよ。」

「俺なら、ここにいるけど?」

つくしがハッとして身を捻って見ると、すぐ後ろの席に、可愛らしいピンクとオレンジのバラの花束をテーブルに置いた類が、悠然と座っていた。

「何だか、取り込んでるみたいだったからさ。司に邪魔するなって言われたし、声をかけずにいたんだ。話は終わった?終わったなら、司の邸に移動しない?みんなも待ってるだろうし、司も本当に忙しいみたいだしさ。牧野も、行きたくないのかも知れないけど、多分今夜はもう、このまま家には帰してもらえないよ?ああ、もちろん、牧野が、そちらの真面目そうな先生と一緒にどうしても帰るって言うんなら、いくら俺達でも止められないと思うけどね…。どうする?」

類の冷静な言葉に、つくしは何と返そうか、答えあぐねていた。
一瞬、沈黙が落ちた時、ふいに加藤が、テーブルの下のカバンから、何かの書類を取り出した。

「牧野さん。この間、海外に語学留学を考えていると、おっしゃっていましたよね?行き先は決めているのですか?僕もあれから、何か力になれないかと思って、色々調べてみました。これは留学について、僕なりにまとめた資料です。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、イギリス、それからワーキングホリデーについてなど、参考になればと思って。少し重いですが、役に立つと思うので、持って帰って目を通してみて下さい。」

そう言って、紙袋に入れた資料を差し出した。

類も、花束をつくしに差し出し、

「ああ、そうだ俺も、これ。ささやかだけど再会を祝して、プレゼント。司の邸にワインを沢山届けさせたけど、今はこれで我慢してくれる、ma chèrie(愛しい人)?」

つくしが、視線を感じておそるおそる司を見ると、やはり司は額に青筋を浮かべ、こちらを見ている。

「お前ら二人とも、牧野に色目使うんじゃねぇ!いいか、牧野にプレゼントなんてモンをしていいのは、オレだけだ。牧野いいか、オレはもう絶対に、お前を逃さないからな。留学だと?留学なんぞ、道明寺の系列企業のインターンシップでいくらでもさせてやる。ただし、それはオレと結婚なり、婚約なりしてからだ。オレもおまえに渡す物がある…。プレゼントつうより、これは預かり品の返却だな。二度目の返品は、きかないからな。」

一気にそう、司は言うと、懐から、何だか懐かしい感じがする小さなビロードの箱を取り出した。

「少しデザインが古くなっちまってたから、もう一度、ジュエリーデザイナーに頼んで作り直させた。だから少し形が変わってるが、入れ物と、土星のモチーフは変えてねぇ。オレが持っていても何もならない物だから…頼む。もう一度、受け取ってくれ…。」

口調こそぶっきら棒だったが、態度とは裏腹に、ビロードの小箱を差し出す手はかすかに震えていた。
真っ直ぐとつくしを見つめる目には、哀願するかのような、陰があった。

最早、小さなカフェは、彼等の独壇場と化していた。
数組の客だけでなく、店員までもが固唾を飲んで、成り行きを見守っている。

つくしは、目の前に差し出された資料と、花束、そして土星を象ったネックレスが収められているであろう、ビロードの小箱を見ながら、(どうしてこんな事になってしまったんだろう…)と思わずには、いられなかった。

しばらく考えていた彼女だったが、やがてとうとう覚悟を決めたらしく、口を開いた。

「私……。」

3人の男性の真剣な、眼差しが、その先の言葉を待っていた。


(続く


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☆☆☆

先週はスキップしてしまい、すみませんでしたm(_ _)m
3月…何かと多忙ですよね。そんな中、訪問して頂き、ありがとうございます。感謝です!!
完結まであと一息、相変わらずのカタツムリペースですが、ラストに向けて頑張ります。よろしくお願いいたします〜(*^_^*)
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- 7 Comments

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2017/03/13 (Mon) 06:21 | EDIT | REPLY |   

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2017/03/13 (Mon) 21:46 | EDIT | REPLY |   

チムチム  

※香 様

此の手の結末とは、つくしちゃんが他の男性にも言い寄られてしまうという展開でしょうか?いやもー、現実ではアイドルかモデルか、よっぽどお色気ムンムンじゃないとムリだと思いますけどね(汗)まー妄想ですから(笑)※香様のような純愛路線は、私にはムリかも知れません。
焦らすつもりはないんですが、サクサク進めず(T_T)あれ?よく見たら進んでる?くらいな地道さです。でも、進んでます(笑)
じれったいと思いますが、お付き合いして貰えたら、重畳でございます(*^_^*)

2017/03/16 (Thu) 08:21 | EDIT | REPLY |   

チムチム  

※ach※ 様

こんばんは(*^_^*)
3月って何かと慌ただしいですよね〜。そんな中、訪問&コメントまで(T_T)感謝感激雛あられ(雛?)です!!
司くんと類くんとおまけに加藤さん、つくしちゃんの取り合いは良くないですよね♡
お菓子なら、仲良く分けなさい、と言う所だけど、つくしちゃんはねぇ。
※ach※さまがつくしちゃんだったら、どうします?…やっぱり司くんかな?(*^_^*)司くん以外を選ぶ場合は、激しい嫉妬に注意しましょう(笑)
ノコノコペースなこのお話ですが、完結まであと一息です。もしも付き合って貰えたら、感謝感激雛あられ(雛?)でございます〜(o^^o)

2017/03/18 (Sat) 04:41 | EDIT | REPLY |   

チムチム  

※uc※ 様

拍手コメントありがとうございましたm(_ _)m
こちらにてお返事させて頂きます。
息子もすっかり回復し、元気に生意気な態度をとっております(笑)
生意気なのも、元気な証拠ですよね。
※uc※さまも慌ただしい季節ですが、楽しい春をお過ごし下さい(*^_^*)

2017/03/18 (Sat) 04:54 | EDIT | REPLY |   

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2017/03/21 (Tue) 21:01 | EDIT | REPLY |   

チムチム  

こ◯子 様

再々降臨、ありがとうございます♪♪
奥方様は照れ臭かったでしょうか?
いや、あまりに嬉しくて、つい(笑)
お話も読んでいただき、もう、本当にブロガー冥利につきます。

自分のブログでやるのもヘンですが、コメント返信の返信です(*^_^*)

春シリーズのオリキャラ、メッタ刺しにされますかか(笑)
そうですよね、そうなってしまいますかね〜、やっぱり。
花男アプリはやった事は無いんですけど、確かに相手が自分でも、司くんだとモヤモヤしそうですね(笑)

心の闇クイズは、よく考えると、作者様に出すなんて私、何て事を。
適当に正解をかきましたが、正解が正解で良かったです。

司君&つくしちゃんシリーズ…終わるんでしょうか?ひと段落したいとは思っています。

これからもこ◯子様の、シリアスワールドで楽しませて下さいm(_ _)m
名もなきブロガーですが、よろしくお願いします(*^_^*)

2017/03/29 (Wed) 06:05 | EDIT | REPLY |   

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