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堕ちた魂のフーガ 2

二.


「美作さん!ちょっと待って!そんなに早く歩いたら、追いつけないから。」

ズンズン先を行くあきらを必死で追いながら、牧野つくしはあきらに後ろから声をかけた。

「ああ、悪い。ちょっと考え事をしていた。さっ、着いたな。どうする、ここまでくればもう、後は一人で大丈夫だろ?俺は車を待たせてるから、この辺で帰るよ。会社への迎えは、いつでも行ってやるから、また連絡しろよ。俺も正直、かなり仕事が立て込んでるが、出来る限りお前を優先する。じゃあ、またな。」

牧野つくしの借りている、小さな賃貸アパートの近くに車を停め、彼女をアパートの一階入り口前まで送ると、あきらは踵を返して、車に戻ろうとした。

「まっ、待って!今日と明日は会社も休みだし、今日はこの後、特別予定もない。私、美作さんにどうしても、話したい事があるの…だから、ちょっと寄って行ってくれない?」

「お前な。俺がお前の部屋に上がれると思うか?こうして時々、送り迎えするだけでも、十分に誤解される事は分かってる…しかし俺は、今の牧野から目を離すわけにはいかない。お前とは、俺も実はじっくり話したい事がある。だが、今ここでは話せないし、部屋に入るのもまずい。そのうちまた、機会を作るさ。だからそれまでは何も聞かず、送迎だけで我慢してくれ。ーーまぁ俺がことさら何か言ったりしなくても、そのうちボロが出て来るのは目に見えてるがな…。」

あきらの最後のひと言は、夕方の住宅地の雑音に紛れ、殆ど聞き取れなかった。

「えっ、何か言った?」

「いや、別に何も。」

「そう。それならいいけど。それより、じゃあひとつだけ聞いてもいい?」

「聞くだけなら聞くが、質問なら答えられるかどうかは、わからないぞ。」

「美作さん、私のこと、好き?」

突然の直球だったが、あきらは特に迷う事もなく、答えた。

「今のお前には、悪いが俺が特別に好きになる要素は、見当たらないな。逆に嫌いになる要素も、それ程無いが…。」

「それ程無い、って事は、少しはあるって事じゃない!じゃあ、私の事が嫌いになる要素って何?」

「わからないか?…というより、本当にお前、何もおかしいと思わないのか?」

「えっ?何の事?」

「…いや、言い過ぎた。俺は別に、お前の事が嫌いなわけじゃ無い。ただ、今のお前をどう捉えたらいいのかが、全くわからない。」

牧野つくしは、さすがに不審に思ったようだ。
あきらを怪訝そうに見返すと、尋ねた。

「どういう事?」

「何でもない。気にするな。それよりもう家に入れ。」

まだ何か言いたそうにしている彼女だったが、気持ちが変わったようだ。ひとつ頷くと、言った。

「わかったわ。じゃあ今度詳しく教えてね。月曜日に連絡するわ。じゃ、またね!」

そのまま背を向け、帰って行った。
牧野つくしの姿が消えても、あきらはなかなかその場を離れようとしなかった。
しばらくして車にのりこんだが、車はなかなか発進しない。
あきらの乗る黒の車は、運転手付きの高級車だったが、車種は時折見かけるものだったため、夕闇の迫りはじめた住宅街で路駐していても、そこまで目立ちはしなかった。
ただ、後部座席にはフィルムが貼ってあり、中は見えなかった。

コンコン。コンコン。

しばらくして、車に誰かがノックした。
最初、車の中からは無反応だったが、何度かノックされると、少し窓が開いた。

「……」

窓を開け、相手と目を見たものの、車中のあきらは無言だった。

「…ちょっと乗せて下さいます?車を帰してしまったんですの。」

あきらは、あからさまに嫌そうな顔をし、「帰れ。」と一言、言った。

「ふうん。私をそんなに邪険に扱っても、良いのですか?皆さんにバラしますわよ。」

最後の一言は、美しい唇をニタッと曲げ、凄味のある表情だった。
あきらも根負けしたようだ。

「…乗れ。」

と、車に相手を招き入れた。
シートに彼女が落ち着くと、聞いた。

「…で。どこまで知ってる?桜子。」

「まぁ、久々に会ったのに、いきなりですのね。車の後をつけた事は、お詫びしますわ。でも、質問なら私に先にさせていただけます?どうしても聞きたい事、おわかりになりますよね?」

「ああ、何となくな。」

「良かった。もしかして美作さんには、病院の受診をお勧めしなければならないのかと思いましたわ。では質問しますが、あれ、あの女。さっき『牧野』と呼んでらしたあの方ですけど。…あれのどこが、牧野先輩なんですか?私には、どう見ても知らない女にしか見えませんわ。」

はじめて、あきらは横に座る桜子を、意志を持って目に捉えた。
その目は意外にも、苦悩に満ちていた。



(続く


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☆☆☆

すっすみません!昨日忙しすぎてダウンしてました(T_T)夏休み、ラストスパートですね。
お話の続きは、2週間または3週間後に。じんわり謎解きします。
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- 2 Comments

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2017/08/25 (Fri) 06:03 | EDIT | REPLY |   

チムチム  

※an※aru* 様

コメントありがとうございますm(_ _)m
確かに今の所、???、な状態ですよね。自分でも、訳わかんないから早く進めたい!と思います。
一応、大まかなストーリーはあるつもりですが、細かいところは出たとこ勝負で…(^^;;
進行遅いですが、もしもお付き合い下さったら、メッチャ嬉しいです!
またそちらにも遊びに行かせて下さい( ^ω^ )

2017/08/25 (Fri) 23:30 | EDIT | REPLY |   

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