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堕ちた魂のフーガ 3

三.


「暗示?」

「ああ、暗示だ。」

しだいに暮れてゆく住宅地の路地にひっそりと、だが妙に存在感のある黒の高級車が路駐している。
よく見れば運転席にはお仕着せを着た運転手が座り、また車は上品な光沢のある塗装でただの普通車には見えない。
しかし、路地を通る人影はまばらで、たとえ通り過ぎる人がいたとしても、皆それぞれの家路を急ぐ人ばかり。チラリと車に視線を向けはするものの、誰も立ち止まろうとはせず、黙ってすり抜けて行った。
しかし車の中で交わされている会話は、穏便なものとは言えなかった。

「誰が?あの、牧野つくしを名乗っている女がですの?」

「ああ。先に言っておくが桜子、ここからの話は、お前を信用してするものだ。だから、もし話を聞くつもりなら、お前にも協力してもらいたい。お前も、司と牧野には、無事でいてもらいたいだろう?協力する気がないのなら、このまま何も聞かずに、黙って帰れ。今ならまだ、お前は無関係で通る。下手に首を突っ込むと、身を滅ぼすぞ。もう一つ言っておくが、もしも協力してもらう事になれば、身の安全は保証できない。ちょっとヤバい奴らが絡んでる。そのキレイな顔に傷を作る事になって、後悔しても知らないぞ。今すぐ帰っても、誰にも恨まれない。それどころか、牧野はもしこの事を知ったら、巻き込まれないでくれて良かったと、感謝するんじゃないか?」

桜子は横目であきらに流し目をくれた。
微笑を浮かべたその顔は、綺麗だがどこか冷たく、相手を少し小馬鹿にしているようにも、挑発しているようにも見えた。

「まぁ、私を蚊帳の外に置くおつもりですの?私は、学生時代、牧野先輩に受けた恩を忘れてはおりません。もしも先輩に今危険が迫っているというのなら、今こそその恩を返す時ですわ。顔の傷のひとつやふたつ、ついたところで、どうだと言うんですの?元々の顔などもう記憶にもないくらいに変わっているのですもの。どうとでもなりますわ。それより、もう私、好奇心ではち切れそうですわ。一体、これはどういう事ですの?先輩に何が起こっているんですか?それから道明寺さんにも?」

桜子は段々興奮して来たのか、目を爛々と輝かせている。
その姿とは対照的に、あきらは、疲れの滲んだ表情で、目の上を軽く押さえながら答えた。

「桜子。本音を言えば、俺はお前を巻き込みたくない。しかし、どうしても女性の協力者が必要だ。それも本物の牧野つくしを知っていて、信頼できる人物が。だから、危険な事はわかっているが、お前の言葉に甘えようと思う。本当に話を聞くんだな?聞いたらもう、後戻りはさせられないぞ。」

桜子は微笑を引っ込め、真顔で「わかりましたわ。続けて下さいます?」とだけ答えた。
あきらはひとつ頷くと、話を続けた。

「最初に言ったが、あの女…、牧野つくしを名乗っている女だが、どうやら強い暗示をかけられている。」

「暗示って、そんなに簡単にかかるものですの?」

「いや、暗示ってのは、かけられる人によってかなり個人差の出るものなんだ。かからない人には全くかからない。しかしあの女の場合はおそらく、自分から進んで暗示にかかっている。」

「なぜそんな事を?」

「おそらく、司だろうな。」

「え?」

「あの女、本名を、小林由美香という。とある会社の社長令嬢だ。」

「そんな女が、なぜ?」

「どこかで司を知り、一目惚れだと思うがどうやら、入れあげてしまったらしい。」

「先ほど、美作さんに、自分好きかと聞いていらしたようですけど?」

「それは単に、自分の魅力を確かめたかっただけじゃないのか?」

「ふぅん。でもなぜ、暗示にかかるなんて無茶な事を?そもそも道明寺さんは?」

「司は…司は、まだこの事は知らない。」

「先輩と連絡を取っていないんですか?」

「ああ。」

「どうして?あの道明寺さんが。信じられませんわ。」

「俺が誘拐したからな。」

「ええっ!」

「桜子。聞いてくれ。俺は…俺は、牧野に、取り返しのつかない事をした。少し長くなるが…聞きたいか?」

「もちろん、聞きたいですわ。」

辺りはすっかり暗くなり、住宅地の窓から漏れる明かりと、街灯がところどころ光を投げかけている。
闇に紛れた車の中で、あきらは、過去の話を語り始めた。

「俺は…俺はあの時、牧野に再会するとは、夢にも思っていなかった。」



(続く


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☆☆☆

訪問ありがとうございます(*^_^*)
次回、あきら君語りの過去編です。
過去の司くん、登場です。

2週間後に更新できるよう、頑張ります。
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- 4 Comments

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2017/09/04 (Mon) 09:49 | EDIT | REPLY |   

チムチム  

※e※mmon 様

こんにちは〜(*^_^*)
コメントメチャ嬉しいです。ありがとうございます!
いつも、自分のブログそっちのけで他の方々の作品を読んでいるんですが(おい。)もう、他作品が面白すぎて、参ります。読み出すと、肌年齢もマズいのに、すぐ寝不足です。
てな訳で"堕ちフー"シリーズはカタツムリペースですが、呆れずお付き合いいただけたら、こんなに嬉しい事はありません。
※emmonさまの献上作品も、案内楽しみに待っています(*^_^*)!!また寝不足になるだろな(汗)

2017/09/04 (Mon) 23:37 | EDIT | REPLY |   

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2017/09/13 (Wed) 14:37 | EDIT | REPLY |   

チムチム  

※ach※ 様

こんにちは〜(*^_^*)
うれしー!コメントもらうとその日一日中時々ニヤニヤしてしまう、怪しい奴なチムチムです(笑)
お久しぶりです!!※ach※さまお元気にしてますか?私は元気すぎて困るくらい元気です♪特に二次小説を読んでいる時が一番元気かも(笑)
ちゃんとしたコメントをだなんて、嬉しすぎます。もー、「しっかりやれよ!」だけでも大喜びしますから(^-^)
いやんだなんていやん♡※ach※さま可愛すぎて惚れてしまいます(笑)
あきらくん、そう、実はやらかしてしまったみたいなんです…。
何をやってしまったんでしょうね!私も書けるのかドキドキしています(汗)

虫の息なりに頑張ります。一寸の虫の五分魂です!また遊びに来てもらえたら、すごい嬉しいです(*^_^*)
いやん♡ (←ツボりました。※ach※さま可愛すぎる〜)

2017/09/14 (Thu) 22:57 | EDIT | REPLY |   

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